額田王

やすみしし 我(わ)ご大君の 畏(かしこ)きや 御陵(みはか)仕ふる

山科の
鏡の山に
夜はも
夜のことごと
昼はも
日のことごと
哭のみを 泣きつつありて ももしきの大宮人は 行き別れなむ
       
                 万葉集第2巻 155番




原文
 従山科御陵退散之時額田王作歌一首
八隅知之 和期大王之 恐也 御陵奉仕流 
山科乃 鏡山尓 
夜者毛 夜之盡 
晝者母 日之盡 
哭耳<呼> 泣乍在而哉 百礒城乃 大宮人者 去別南
 
現訳
畏れおおくも天皇陵に申し上げます
山科の鏡山に向かって
夜は夜通し、日中もずっと声を上げて泣いてばかりおります
こんな風に泣き続けながら宮中に御仕えする人々はみな別れて行くのでしょうか







・補足・
長詩
陵完成の時に読まれた詩と思われる。
やすみしし
大君(おほきみ)の枕詞/大君=天智天皇
鏡山(鏡の山)
天智天皇の陵、山科陵のある山のこと
 
殯の時に詠まれた詩も存在          万葉集第2-151番
陵に納められる時皇后・倭媛王が詠んだ詩   万葉集第2-153番






 表紙   万葉集   額田王