大海人皇子

み吉野の 耳我(みみが)の嶺に
時なくぞ 雪は降りける
間無くぞ 雨は振りける
その雪の 時なきがごと
その雨の 間なきがごと
隈(くま)もおちず 思ひつつぞ来し
その山道を
       
                 万葉集第1巻 25番




原文
 天皇御製歌

三吉野之 耳我嶺尓
時無曽 雪者落家留
間無曽 雨者零計類
其雪乃 時無如
其雨乃 間無如
隈毛不落 <念>乍叙来
其山道乎
 
現訳
吉野の山峰に
時を定めず雪は降り続ける
絶え間なく雨は降り続ける
その雪が時を定めないように
その雨が絶え間ないように
道の曲がり角ごとに思い悩みながら
そうやってやどった山道だった







・補足・
長歌

671年(天智10)
天智天皇が病に倒れた後、即位する様に言われたがそれを受ける事が謀反として捌かれる事と知った大海人皇子は出家すると言って吉野の山は分け入った。
その頃の事を即位して思い出して詠った歌だと思われる。





 表紙   万葉集   天武天皇(大海人皇子)