中大兄皇子

香具山は 畝火(うねび)雄々(をを)しと
耳成(みみなし)と 相(あひ)争ひき 神代より かくにあるらし
古(いにしえ)も しかにあれこそ うつせみも 妻を争ふらしき
       
                 万葉集第1巻 13番




原文
 中大兄[近江宮御宇天皇]三山歌一首

高山波 雲根火雄男志等
耳梨與 相諍競伎 神代従 如此尓有良之
古昔母 然尓有許曽 虚蝉毛 嬬乎 相挌良思吉
 
現訳

香具山は畝傍山がいとしくて
耳成山と戦った
古代からそうだった
昔からそうだったのだから現代でも妻を奪い合うのですよ







・補足・
長歌
香具山<高山>
高天原(たかまのはら)にあったといわれる山(奈良県橿原市南浦町)で畝傍(うねび)山・耳成(みみなし)山とともに大和三山の一つ

畝傍山<雲根火>
橿原市にある死火山で耳成(みみなし)山・香具山とともに大和三山の一つ

耳成山<耳梨>
橿原市木原町にある山(別名青菅(あおすが)山・梔子(くちなし)山)
神話に香久山(女神)が新たに現われた畝傍山 (男)に心移りして、古い恋仲の耳梨山(男)と言い争いをしたというのがあり、その神話と自分達(弟・大海人皇子と妻・額田王/元・大海人皇子の妻)の事を詠っている
を愛しと<雄男志>
『雄々しく思って』や『いとしいとして』と違う解釈で訳される
解釈が統一されていない歌の一つといえる




 表紙   万葉集   中大兄皇子(天智天皇)