額田王

わが背子(せこ)が
い立たしけむいつ樫(かし)がもと
       万葉集第1巻 9番




原文
 幸于紀温泉之時額田王作歌

莫囂圓隣之 大相七兄爪謁氣 
吾瀬子之 射立為兼 五可新何本
 
現訳
雲よどうか月を覆い隠さないでおくれ
我が君がたたずんでいる大きな橿の木の下を







・補足・
斎明天皇が紀温泉(今の和歌山県)に行幸されたときに同行し詠んだ歌
紀温泉

和歌山県白浜の湯崎温泉
斉明天皇は658(斉明4)年10月から翌年1月にかけて行幸
この歌は難読歌で『莫囂圓隣之 大相七兄爪謁氣』の読みが未だに定まっていません。
様々に解釈され、転記ミスが言われる歌です。

夕月し おおいなせそ雲
わが背子(せこ)が
い立たしけむいつ樫(かし)がもと

莫囂圓
莫囂=昼に比べたら夜は静かで
圓=円、満月のこと
そのとなりとあるので夕月

謁氣
雲のこと
わが背子

親密な男性に対して用いられる言葉です
夫や恋人、兄弟などでこの歌の場合、有間皇子の事を指しているという説があり
その事から姉弟説が浮上している様です
ただ、時期からして有間皇子の処刑が決まりそれに嘆く元夫(大海人皇子)を指すとも考えられなくはないでしょう




 表紙   万葉集   額田王